ワンスアラウンドの『現場マガジン』 2021年6月9日号

いつもお読みいただきましてありがとうございます。
今週は、『人を育てる』シリーズの第十二弾。
今回は入社2年目社員が新入社員を育成することで成長したことを、 2年目社員と店長へのヒアリング結果から2回に分けてお伝えしたいと思います。
人を育てる法則 【vol.012】


シスター制度を通じて成長する2年目社員(上)
〜ヒアリングから感じる4つのOJT成果〜
皆様、こんにちは。
ワンスアラウンドで新卒採用を担当している岡田聖子です。
新入社員が入社してから約2か月、そろそろ現場に少しずつ慣れてきた頃ではないでしょうか。
今回は、新入社員教育の代表格ともいえるOJTについて、2年目で教育担当になった若手社員のヒアリングから、 改めてその役割と意義を考えてみたいと思います。
終身雇用前提で新入社員を採用する日本は、社員教育がしっかりしているイメージですが、 実は日本のGDPに占める企業の能力開発費の割合は国際的にも非常に低く、米国の1/20 しかありません。


現場が強いと言われる日本企業の特徴は、能力開発費にカウントされない企業内教育=OJTが 欧米企業に比べて大きいからだと思っていましたが、調べてみると、 日本のOJTの実施率は、男性が50.7%、女性が45.5%で、OECD(経済協力開発機構)平均の男性55.1%、女性57.0%より低く、 約半数の企業でしかOJTが行われていないというイメージギャップに驚きました。


OJTといえば、新入社員が配属先で受ける現場教育をまずイメージされる方が多いのではないでしょうか。 OJTの役割は、新入社員の育成を主な目的にしていますが、二次成果としてその教育担当者にも大きな成長機会になっているのです。

弊社の新入社員教育は、配属後の各店舗に設定された教育係(=呼称:シスター)が現場で育成する「シスター制度」を導入しています。 「シスター」は、新入社員入社前の3月に行う事前研修で「育成計画」を立て、配属後1か月間は毎日、2か月目からは週に一度、 「振り返りシート」を通じて新人にフィードバックを行います。一方で、われわれ本部は育成担当の「シスター」に対して、 コメントの書き方や新人への声掛けの仕方などのフィードバックをする・・・という二段階方式を取っています。
今年の弊社のシスター担当者は、半数が入社2年目(=昨年の新入社員)なのですが、彼らが新人育成を始めて1か月強で、 既に成長してくれているのを感じました。
OJT指導を通じた「初シスター」としての成長を、彼らのコメントとともにご紹介いたします。

<入社2年目シスターから感じる4つの成長>
@「業務整理と理解が進み、事前準備の大切さに気付く」
:教える前に、業務背景や全体の流れをしっかり理解すべく、
  改めて自分自身で業務整理を行うきっかけに。


〜2年目社員コメント〜
・相手に伝わる教え方は難しい。自分がまず教える内容を 人に伝えられるレベルまで理解していないと教えられないので、 事前に内容をまとめてから新入社員に教えるようにした。
・去年は不安ばかりだった業務を一通り教えられるようになり、自分が成長したと感じる。 自分も難しい業務と感じたことは「一度で覚えられなかったら聞いていいからね」 「ここの部分、去年自分がミスしたから気を付けてね」と具体的な失敗例を伝えて教えていったので、 今のところ自分と同じミスはしていない様子(笑)


A「周りの人へ改めて感謝し、チーム意識が向上」
:“昨年の自分”と“先輩たち”の間にいる“今の自分”のレベル感を
 改めて認識。
 周りに支えられて“今の自分”がいると知り、チーム意識がUP。


〜2年目社員コメント〜
・初めてできた後輩にしっかり教えてあげられない自分に不甲斐なさを感じた。 昨年教えてもらった自分のシスターに相談したり、他の先輩にも助けてもらうことで、 先輩たちの偉大さを改めて感じた
・シスター役が出来ているのは、チームのメンバーの協力あってのことだと思う。
・新人に何を教え、今の完成度はどれくらいなのか、新人の特徴やクセをチームで共有している


B「伝え方の試行錯誤で部下育成力がレベルアップ」
:相手のタイプを考え、相手が受け入れやすい言葉の選び方や
 姿勢を考えて接する


〜2年目社員コメント〜
・仕事のやり方や知識を教えることから入るのでなく、メンター役になることを意識した。 まず心を開いてくれるようにと、とにかくたくさん会話をして、 心の距離が縮まってから新人のタイプにあわせて教え方を変えた
・言葉選びは難しい。間違った時に「ダメ」とはっきり伝えるのではなく、 「少しやり方を変えてみようか」というニュアンスで伝え、その理由や根拠も伝えることで、 納得して聞き入れてくれると感じる
・言われるがまま動かないといけない雰囲気が自分自身も好きではないので「強要しない」ようにし、 今の業務状況を確認してから頼み事をする。
褒めるのは大事。やりがいや達成感を感じていると、前のめりに楽しそうに働いてくれる。 数値も入れ、具体的に明確に褒めてあげるようにしている。
・新人には忙しくても常に同じテンションで接し、常に声をかけるようにしている。


C「自信と責任感が生まれ、オンとオフの切替意識がUP」
:後輩に基本業務を教えることで、自分を振り返るきっかけに。
 先輩としての自覚が意欲につながる。


〜2年目社員コメント〜
・シスターを始めたばかりの時は自分に自信がなく不安だった。今は前より自信が持てるようになった
・指導する立場になったことで責任感がより強くなった。新入社員は先輩スタッフをよく観察しているので、 自分の働いている姿を見せるのも指導の一つだと思う。言葉遣いや電話応対など、 今まで以上に基本に忠実にやろうと自分を振り返る機会になっている
・型を知ってこその型破りなので、自分のやり方でなく、まずベーシックな方法を教えるようにしている。
・年が近く親しみやすい存在でありたいと思う一方、仲良くなりすぎると仕事中に甘えが出るので、 休憩中や出勤前後のフレンドリーさと仕事中の先輩スタッフとしての自覚を持った接し方を意識し、 近すぎず遠すぎずの距離感を大切にしている。


先輩になって、たった1か月余りで、新人を教える側の2年目社員が成長している様子を感じていただけましたでしょうか。

入社2年目の現シスターを教えた、入社3年目の元シスターにもヒアリングしたところ、 後輩を教える際は、以下の3つに気を付けていたとのこと。
・何でも聞きやすい雰囲気を作ること
・時々質問して、新人が自分の考えを言う機会をつくるように意識すること
・オンオフのメリハリをつけること

悩みながらも一生懸命考えてくれた先輩の背中から何かを感じ取り、 この3つはしっかりと現2年目シスターに引き継がれているようで、OJTならではの醍醐味を感じます。

そして、入社3年目の元シスターは最後にこう話してくれました。
「1年間シスターとして教えながら、自分も沢山成長させてもらった。簡単ではなかったけれど、シスターをやって良かった!」

人に教えることで自分も成長するOJTは、入社2〜3年目の若手が教育係をする意義のほうが大きいのかもしれません。
新人を教える為のOJTでなく、若手の成長の場を作る為のOJTというふうに捉えると、教育制度に新たな視点が加わります。 いつか彼らがマネジメンターになった際は、こうした経験がきっと活きてくるでしょう。


今回はここまでとさせていただきます。
次回は、若手シスターの成長を感じるポイントや育成姿勢の特徴を、店長達から見た視点でお伝えしたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

来週は、「ショップレポート」をお届けします。
どうぞお楽しみに!

ワンスアラウンド株式会社 シニアディレクター
キャリアコンサルタント(国家資格)

岡田 聖子


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