ワンスアラウンドの『現場マガジン』 2021年11月24日号

皆様、こんにちは。
ワンスアラウンドで新卒採用を担当している岡田聖子です。
今週は、『人を育てる』シリーズの第18弾。
前回の10月27日配信号の障がい者雇用のルールの概要に続き、 今回は、弊社が運営する店舗で受け入れた、 支援学校の知的障がいの生徒さん実習引き受け事例をお伝えしたいと思います。

人を育てる法則 【vol.018】


知的障がい者の採用活動を通じて学んだこと
企業にとって、障がい者雇用は経営課題の1つでもありますが、 前回は、弊社が障がい者雇用への取り組みをスタートするにあたって、 <障がい者雇用の対象者と様々なルール>や<業種別の各企業の雇用の実態><店舗業務の棚卸しの実施>など、 採用準備段階のお話しをさせて頂きました。
そこで今回は、今後、障がい者を採用される企業の皆様へのご参考になるような情報提供ができれば、 そしてそれが少しでもお役に立てればという想いで、弊社が採用活動を通じて経験したこと、学んだことをお伝えしようと思います。

まず、具体的に着手するにあたり、企業が知的障がい者を募集・採用する際に、 公的機関をどの程度利用しているのかを調べたところ、全体の 17.7%に留まり、利用している公的連携機関先は、 公共職業安定所が76.8%、次いで学校・ 各種学校が35.0%でした。
知的障がい者を募集・採用する際に利用している公的連携機関先 (複数回答)
厚生労働省 平成 30 年度障害者雇用実態調査結果
学校との連携が意外に少ないと思いましたが、幸いにも弊社は、東京都の特別支援学校とご縁ができましたので、 知的障がいがある生徒さんに絞り、職場実習をお引き受けしてみることにしました。
これなら生徒さんの性格や得意なこと、意欲などの理解が進み、 生徒さんも職場体験によってどんな仕事か理解が深まるのではないか、 そしてその間に業務の切り出しのヒントもつかめるかと思いました。
そこでまず支援学校の見学に伺うことにしました。

複数の支援学校を訪問して驚いたのは、障がい者の方が就労に必要な知識や技能を身につけるための様々なプログラムにより、 少人数制で実践的な教育や指導がなされていることです。
実際にアパレル系の物流センターに実習にいった経験がある生徒さんと話をさせてもらったのですが、 ハキハキと物流の面白さを伝えてくれ、「仕事内容」や「働くこと自体」の理解が生徒の中にしっかりと育っていて、 支援学校の存在の大きさを感じさせられました。

支援学校には様々なコースがありますが、今回は弊社が実習で受け入れた、 「就労」を目指す「就業技術科」「職能開発科」の学科についてご説明したいと思います。

<支援学校の高等部の学科>
東京都には、高等部が設置される都立の障がい特別支援学校が全部で28校あります。 普通科の他に、専門学科の「就業技術科」が5校、「職能開発科」が4校ありますが、 この2つの学科の生徒の就職率は非常に高く、1学年の卒業生440人に対して 97%以上の428人が就職する(令和元年実績)など、多くの学校が「生徒全員の企業就労」を目指しています。
支援学校は、入学倍率が1倍を超えているところがほとんどで、 中には入学のための塾に通って対策をする生徒もいると伺いました。
通学区域を定めていないため、多くの生徒さんが長距離通学されています。 生徒全員の企業就労を目指す就業支援科の進路指導は下記のようになっています。 (学校により各校内容が違いますので、イメージとしてご覧ください。)


<就労に向けての授業内容>
◆授業の中に、「職業の教科」が取り入れられている
終日かけて行う「職業に関する教科」の授業があり、週5日の登校のうち、 1年生で週2日、3年生で週3日程度の頻度で実施しています。 1年次に事務系、物流系、清掃系、食品・福祉系など複数のコース全てを体験し、 企業での実習体験もしながら自分の適性を考える機会を作り、2年次には自分に合う大枠のコース決め、 3年次には更にコース分けをして、就労に必要な知識や技能を深めていきます。

◆授業は「実践」のイメージに近いもの
「清掃」の授業では、実際に学校内を清掃しながら学ぶので、校内はとてもきれいで、 廊下はピカピカに光っていました。
「事務」の授業では、学校内で配布するプリントなどの仕分けや、 印刷ミスしたカタログの一部に正しい文字シールを貼る細かな作業を1つ1つ丁寧に行っていました。
実際に見学は出来ませんでしたが、学校によっては、物流(ロジスティクス)の中で フォークリフトの授業、事務の中でワードやエクセルの検定を受ける、 フードサービスでは校内でのカフェで実際に注文から提供まで行う授業があるなど、 就労に向けて実践的な学習が用意され、日々の学校生活の中で技術の習得を行っています。
また、実際に就労した際に困らないように、たとえば立ち仕事の物流の授業では、 朝9時から15時半くらいまで、昼食時以外は基本的にずっと立って作業をするなど、 就労に近い環境で学ぶ配慮がされています。

◆1年生から職場体験(インターン)実施
就業体験を行う機会は1年生から用意されています。 複数の職業を体験した上で自分の適性を考える機会を多く作り、実際に体験してみて、 仕事内容が自分に合う、合わない、を3年かけてじっくり考えていくのです。
1年生は1〜3日の短期、2年生は1〜2週間、3年生では1〜3週間程度の日数で、 年に数回の実習を各企業で行うので、職場の雰囲気の理解が進み、実習先に就職する生徒も少なくないようです。 企業側もどんな学生なのか実習で分かっていますので、実際に就労する際も受け入れ態勢の準備がしやすくなります。
一般の高卒生は、「職場体験」として3年生の夏休み時期に企業訪問を1〜3社程度行い、 選考応募する会社選びをしていきますが、高校によっては1社のみに絞っての職場体験を行うところもあり、 複数の企業を比較検討することが出来ません。
それに比べて支援学校では、1年生から複数の職種体験をしながら、自分の適性を考え、 また就労に足りない部分は学校で指導を受けながら成長できる環境があるので、かなり手厚い支援です。
また、それを支える教職員の方が非常に熱心で、実習の事前顔合わせ&業務内容確認会から始まり、 実習途中の勤務状況視察、実習後の振り返りや生徒指導、採用面接での同行同席 (合理的配慮として法律で認められています)など、一生懸命に生徒をささえられていました。


<支援学校の生徒さんとの出会いから内定へ>

支援学校を見学して、是非、近場の店舗で職場体験される生徒さんを紹介して欲しいと申し出て、 2校から生徒さんが来ることになりました。店舗では、商品の仕分けやシール貼りなど多くの業務をこなしていただき、 彼らに適正な業務内容が見えてきました。
職場体験にきてくれた生徒さんは皆、一生懸命に業務に取り組んでくれました。 OPEN前の店清掃では、扉に拭き残しの指紋が無いか横から見て仕上がり具合をチェックしたり、 「時間を図りながらやると作業効率がUPする」と教えられると、「この棚の整理を何分で仕上げよう」と 自分で目標を立て、棚ごとの所要時間を小さなメモに記入しながらどんどんスピードアップしていったりと、 ひたむきに取り組む姿に現場のメンバーも驚いていました。

先日、この生徒さんが入社を希望され、面接の結果、入社内定となりました。

障がい者就労に向け、3年間かけて育て上げてこられた教職員の方の思いも一緒にお引き受けし、 彼らが活き活きと働ける環境づくりをしていかなければなりません。

内定後も入社前の実習として3回目の店舗実習を年明けに行う予定です。
業務内容の確認をしながら、環境に徐々に適応していく場として活用しつつ、 1回目の実習引き受け前に行った、受け入れ店舗メンバーへの説明会を、 改めて実施して一緒に働くメンバーとの相互理解を深めていきたいと思います。

「一億総活躍社会」を目指す日本。障がいのある方の働きやすさが、 互いに得意を認めあえるチーム作りに繋がり、ひいては社員全員の働きやすさにつながっていくことを願っています。


最後までお読みいただきありがとうございました。

来週は、「ショップレポート」をお届けします。
どうぞお楽しみに!

ワンスアラウンド株式会社 シニアディレクター
キャリアコンサルタント(国家資格)

岡田 聖子


このメールマガジンは、お客様によるご登録や名刺交換など、 弊社と何らかのご縁をいただいたお客様にお届けしております。
皆様からのご返信を筆者も楽しみにしております。 ご感想などございましたら、ぜひ本メールよりご返信下さい。



バックナンバーはこちらからお読みいただけます。