ワンスアラウンドの『現場マガジン』  2022年7月13日号
皆様、いつもご覧いただきまして誠にありがとうございます。
ワンスアラウンドで、ビームス みなとみらいのショップマネージャーをしております武島幸宏です。
今週は現役店長の目線で、店舗の今、そしてこれからをレポートする「店長からの手紙」の第3弾をお届けいたします。
現場からのレポートが少しでも読者の皆様のお役に立つことが出来れば幸いです。


店長からの手紙 【vol.004】

店長とサブ店長のあるべき関係とは?
サブ店長から「店長が私に期待することは何でしょう?」と問われたら、どのように答えますか?
店舗の状況によって、答えは様々だと思います。役割を伝えることもあるでしょう。 あるいは、職責のお話をすることもあるかもしれません。
ひとつ確かなのは、サブ店長は店長にとって相棒のような存在であるということです。
店長とサブ店長の信頼関係が強固な店舗はうまくいきます。
ですから、私は質問にこう答えます。「私と同じ思想でいてほしい。ただし異なる視点を持っていてほしい」。 そう答えるようになったのは、あるサブ店長と仕事を共にした経験からです。

「サブ店長は特別扱いをする」

私は、ビームス みなとみらいがオープンした時から店長を務めております。 立ち上げの時にサブ店長だったIとは、三年ほど店長とサブ店長という間柄で仕事をしました。
前回「ビジョン」についてお話をさせて頂き、当店のチームビジョンが 「血の通ったお店」であるということをお伝え致しました。
私はまずIと、チームビジョンについてとことん話しあう時間を設けました。 それは私という人間をより知ってもらう時間とも言えました。
他のスタッフには設けなかったミーティングですので、ある意味特別扱いをしました。 何故なら、彼はこれから私の相棒になるからです。
特別な存在になってくれなければ困るのです。幸い彼は大変共感してくれました。 そして、私以上にチームビジョンを言葉に出し、スタッフに伝え、 模範となる行動を続けてくれました。

「お客様のお声」

彼がチームビジョンを率先していたことの証左(しょうさ)に、 お客様から頂戴したこんなお言葉があります。

「Iさんという男性スタッフさんに親切にコーディネートを提案して頂いた。 購入したい商品の中にお目当てのサイズがなく、正直ネットや違う店舗で買う事が出来たのだが、 Iさんから買おうと思った。コロナ禍の中、改めてFACE to FACEの良さが分かった接客でした。 また利用したいと思います」

これをして欲しかったのだ。このお言葉を読んだ時、私は思わずそう呟いてしまいました。 改めて彼に感謝を伝えました。
そして、Iが頂いたこのお言葉が当店の目指す対応の在り方です、と店舗内に共有しました。

「店舗ミーティングでのひと言」

これだけでも頼りになることなのですが、Iは目指す方向は同じでありながら、 私とは異なる視点を持ち、常に新しい気付きをくれるサブ店長でした。

こんなことがありました。ビームス みなとみらいでは月に一度、 閉店後に店舗ミーティングを行っていますが、その日の主題は 「接客のお悩み相談会をしよう」でした。 繁忙期が過ぎ、キャリアの浅いスタッフが多く入った時期でしたので、 接客に対しての不安を解消し、モチベーションを喚起することが必要だと判断したからです。

ある若い男性スタッフが、「ビッグサイズのシャツのデザインを気に入ってくださった ご年配のお客様がいたのですが、普段大きめにお召しにならない方で、 サイズ感が気になるという点を解消出来ませんでした。みなさんだったらどうされますか?」 という質問をしました。

他のスタッフからは、「比較検討出来る商品をお持ちする」「コーディネート提案をする」 といった意見が出ました。
私はそれを受けて、「そのお客様はご年配だったんだよね?俺だったらシャツをタックインして、 袖捲りするスタイルをご提案するかもしれない。 ほら、こうすると大人っぽくてかっこよくない?どうだろう?」と、 実際に着方を実演してみせました。

質問してくれたスタッフから「確かに」という声が出ました。
私はIに意見を求めました。するとIはこう言ったのです。 「店長の意見はすごく良いと思います。洋服屋らしい、店長らしい解消の仕方で僕は好きです。 でも僕だったら、競合店をご紹介します」。

その場にいたスタッフたちは少し驚いたような顔をしました。Iは続けました。 「近隣の競合店にどういった商品があるか僕は見ているので、 そのシャツのサイズ感でのお悩みでしたら、お話の内容次第ではありますが、 場合によってはA店にお連れすると思います」

それを聞いて、私はパチンと手を叩いて笑いました。 「Iらしいお客様への血の通わせ方だね!俺は素晴らしいと思うよ。 みんな。こういう解消の仕方だってあっていい。引き出しとして持っておくといいよ」。 そう伝えました。

このディスカッションの時、私にはIの発想はありませんでした。
そして、彼の意見は、チームビジョンである「血の通った店舗」に則っていました。 一本取られたといいますか、清々しい気持ちになったことを今でもよく覚えています。
私にとってそれは新しい気付きであり、新しい血の通わせ方でした。
彼の言ったことは、日頃から競合店の状況や商品を知っていなければ出来ませんし、 ある意味私より洋服屋らしいのではないか、と思いました。
よき相棒がチームを強くする
よき相棒を作る為の特効薬はありません。年月も必要でしょう。
ただ、ひとつ言えるのは、「正直であることが信頼を築く」ということです。 私とIは、よく相談をしていました。うまくいかないことや思い悩むことがあれば、 素直に心情を伝え、打開する道を探しました。
同じ思想で、同じ目標への舵を共に切っていく相棒にだけは、時に弱さも見せる。 そういった正直さも、トップとNo2の間には必要なことかもしれません。

新選組の近藤勇にとっての土方歳三。ビートルズのジョン・レノンにとってのポール・マッカートニー。 よき相棒がいることは、チームを強くするポイントのひとつです。
真によき相棒は支えてくれるだけでなく、チームのために異なる目線で意見をくれます。 そういったサブ店長をそばに置くことで、店長は本当の意味で孤独ではなくなります。
そしてそれを作るのは他でもない、店長の役割のひとつなのです。


最後までお読みくださりありがとうございました。
明日も売場と向き合いたいと思います。


最後までお読みいただきありがとうございました。

これからも現場からのリアルなレポートをお届けします。
どうぞお楽しみに!

       ワンスアラウンド株式会社
       ビームス みなとみらい 店長

武島 幸宏

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